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大阪地方裁判所 平成7年(む)628号 決定

主文

一  被告人甲野太郎に対する銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件にかかる刑事確定訴訟記録につき、平成七年一〇月二七日大阪地方検察庁検察官が申立人に対してした閲覧不許可処分中、別紙目録一記載の記録部分についての閲覧不許可処分を取り消す。

二  右検察官は、申立人に対し、右記録部分を閲覧させなければならない。

三  申立人のその余の申立てを棄却する。

理由

第一  申立ての趣旨及び理由

申立ての趣旨は「被告人甲野太郎」に対する銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件にかかる刑事確定訴訟記録につき、平成七年一〇月二七日大阪地方検察庁検察官が申立人に対してした閲覧不許可処分を取り消し、右確定記録を閲覧、謄写させなければならない。」との決定を求めるというものであり、申立ての理由は申立人提出の不服申立書記載のとおりであるから、これを引用する。

第二  当裁判所の判断

一  申立て記録、関係記録並びに申立人及び検察官に対する聴取の結果によれば次の事実が認められる。

1  申立人は、平成七年一〇月二七日被告人甲野太郎(以下「被告人」という。)に対する銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(大阪地方裁判所平成三年(わ)第二一四五号)にかかる刑事確定訴訟記録の保管検察官である大阪地方検察庁検察官に対し、同記録(以下「本件保管記録」という。)の閲覧を請求した。

2  本件で申立人が閲覧を求める本件保管記録は、「被告人は法定の除外事由がないのに、平成三年四月一日午後一時三〇分ころ、大阪市北区豊崎三丁目八番五号朝日プラザ梅田[2]一〇一号室において、自動装填式けん銃五丁、アンダーレバー式空気けん銃一丁及び火薬類である自動装填式けん銃用実包七〇発を所持した」との趣旨の公訴事実で平成三年六月二七日大阪地方裁判所に公訴提起された被告事件にかかるものであり、同年一一月二五日同裁判所において判決の言渡しがあり、右判決は同年一二月一〇日確定した。

3  申立人は、本件被告人が関与したとされ捜査中の銃砲刀剣類所持等取締法違反被疑事件で現在勾留されている乙(以下「被疑者」という。)の弁護人であり、被疑者は被疑事実を否認している。

4  大阪地方検察庁検察官は、平成七年一〇月二七日付けで「検察庁の事務に支障がある。」ことを理由として、申立人からの右閲覧請求を許可しない処分をした。

二  そこで、以上を前提として本件処分の当否を検討する。

1  別紙目録一記載の部分については、いずれもその内容が公表されているものであり何ら検察庁の事務に支障が生じるとは認められないから本件処分中別紙目録一記載の部分については閲覧を不許可にした処分は違法である。

2  別紙目録二記載の部分については、被告人及び関係人のプライバシーに関するものであって、これを申立人に閲覧させることは、一般に「関係人の名誉又は生活の平穏を著しく害することとなるおそれがある」(刑事確定訴訟記録法四条二項五号)と認められる。そして、右部分が本件事案の弁護、解明に必要であるという特段の事情もなく、本件閲覧の目的等に照らして右部分の閲覧について申立人が「閲覧につき正当な理由がある者」(同項ただし書)であるとは認められないから、検察官がその閲覧を不許可とした処分は結論において正当である。

3  その余の部分は、被告人の供述調書をはじめ、いずれも現在捜査中の被疑者の犯罪行為にかかわる証拠等であり、これらを閲覧すれば、事案の性質上、申立人の意図は別として、捜査にかかる各事実における被告人及び被疑者の具体的行動などが明らかとなり罪証隠滅行為が容易となり、今後の捜査に困難が生じるおそれが十分にあると認められる。

したがって、現在これを申立人に閲覧させることは、被疑者の勾留にかかる事件及びその他の関連事件の捜査に不当な影響を及ぼすおそれがあり、申立人の本件保管記録の閲覧請求権が制限されることもやむを得ないと認められるから検察官が右部分について閲覧を不許可にした処分は正当である。

三  以上のとおり、本件申立てのうち、別紙目録一記載の部分についての閲覧不許可処分の取消しを求める部分は理由があり、その余の申立ては理由がないので刑事確定訴訟記録法八条、刑事訴訟法四三〇条一項、四三二条、四二六条一項、二項により主文のとおり決定する。

(裁判官 伊元啓)

別紙 (目録一)

一 「人物評論」で始まる書面(雑誌の表紙及び記事の写し)

二 「第三の所得」で始まる書面(雑誌の表紙及び記事の写し)

〈以下略〉

別紙 (目録二)

一 「転退学通知書」と題する書面

二 「転学児童教科用図書給与証明書」と題する書面

〈以下略〉

別紙 不服申立書〈省略〉

別紙 閲覧不許可通知書〈省略〉

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